N64パーフェクトダークのハックロムツール(以下、PerfectEditor)を使用して、海外版と日本語版の差異を調査する方法です。
はじめに
調査の方法ですが、アクションブロックを比較する方法を解説します。
アクションブロックとは、ミッション中のアクション全般を管理しているものです。
NPCのセリフやオブジェクトの動き、ミッションのフラグ管理などをアクションブロックが行っています。
PerfectEditorでは、アクションブロック全体をテキスト形式で出力することができるため、海外版、日本語版それぞれで出力すればWinMerge等の比較ツールで簡単に比較できるのですが、日本語版のアクションブロックの出力にひと手間必要となるため、そちらのやり方を解説します。
また、今回海外版と表記していますが、正確には北米版(NTSC v1.1)との比較となります。
欧州版(PAL)はまた別となります。
必要なもの
- ハックロムツール:PerfectEditor
- 比較ツール:WinMerge
- 海外版パーフェクトダークのROM:Perfect Dark (U) (V1.1)
- 日本語版パーフェクトダークのROM:Perfect Dark (J)
やり方
今回、既に判明している海外版と日本語版に差異があるミッション「キャリントン協会ビル<防衛>」を例に調べてみましょう。
キャリントンの重要機密を破壊する際に、海外版の場合、キャリントンから命令される前に破壊することが可能です。
一方、日本語版ではキャリントンからの命令がないと破壊することができません。
このキャリントンからの命令で破壊可能とする処理がアクションブロックに入っているはずです。
- 「PerfectEditor」を起動します。
- 「File」→「Open Setup Unconpressed」メニューを選択します。
- 2つのファイルを読み込みます。
1つ目は、「キャリントン協会ビル<防衛>」のミッション設定ファイルを読み込みます。
PerfectEditorのインストールディレクトリ内にファイルが用意されており、その中から選択します。(※NTSC v1.1の内容となります。)
ファイルを選択すると、「Recent」の下側に設定ファイルのミッション情報が表示されるため、「Carrington Institute Defense」のファイルを選択し、「開く」ボタンを選択します。 - 2つ目は、背景情報ファイルを選択します。
ファイル名が自動で入力されるため、そのまま「開く」ボタンを選択します。 - 「Edit Setup」→「Edit Action Blocks」メニューを選択します。
アクションブロックの編集画面が開きます。 - 「Write All to Text File」ボタンを選択し、アクションブロックをテキスト形式で保存します。
これで北米版(NTSC v1.1)のアクションブロックをテキスト形式で保存することができました。 - 次に、日本語版のアクションブロックを出力していくのですが、ミッション設定ファイルの番号を事前に調べておく必要があります。
「Tools」→「Game Configuration」メニューを選択します。 - 北米版(NTSC v1.1)のROMが読み込まれていることを確認します。
- 「Level Info」で「19 – Defence」を選択します。
次に、「Setup File」の右側にある四角を選択します。
すると、File Managementの「Files」にSetup File(ミッション設定ファイル)が表示されるため、ファイルの番号を確認します。
今回の場合「0136」となります。 - 「choose ROM」ボタンを選択し、日本語版のROMを読み込みます。
- File Managementの「Files」にて、先ほど確認した番号の「0136」を選択し、「Save File」ボタンを選択します。
- 「.bin」と入力されていますが、拡張子を「set」に変更し、保存します。
- 「File > Open Setup Unconpressed」を選択します。
- 先ほど保存した日本語版のミッション設定ファイルを選択します。
※ミッション設定ファイルにアクションブロックが含まれています。 - 背景情報ファイルは、同様にPerfectEditorのインストールディレクトリ内のファイルから選択します。
- 日本語版PDのミッション設定ファイルが読み込まれている状態で、「Edit Setup」→「Edit Action Blocks」メニューを選択します。
アクションブロックの編集画面が開きます。 - 同様に「Write All to Text File」ボタンを選択し、アクションブロックをテキスト形式で保存します。
これで日本語版のアクションブロックをテキスト形式で保存することができました。 - 「WinMerge」を起動し、テキスト形式で保存した北米版と日本語版のアクションブロックを比較します。
- [Alt] + [↓] で、差分箇所に移動し差分を確認します。
1つ目の差分
2つ目の差分
このようにして差異を調査することができます。
今回、「キャリントン協会ビル<防衛>」を例に調査しましたが、以下の差異が判明しました。
Unset Tags for 16-Object (Carrington Institute Defense Sensitive information) Invincible
上記のコマンドの位置が変わっています。
キャリントンの重要機密の無敵状態を解除するコマンドです。
北米版では、ステージ開始のタイミングで無敵状態が解除されています。
日本語版では、ステージ開始のタイミングでの無敵状態の解除が削除され、キャリントンの命令の後に無敵状態の解除が追加されています。
そのため、キャリントンから命令されない限り、破壊することはできません。
Unset Tags for 16-Object (Air Base Safe door) Invincible
上記は、重要機密が保管されている金庫の扉の無敵状態を解除するコマンドです。
北米版では、ステージ開始のタイミングで無敵状態が解除されています。
日本語版では、ステージ開始のタイミングでの無敵状態の解除が削除されています。
この金庫の扉の無敵状態の解除は、ステージ開始のタイミング以外にも処理が入っています。
キャリントンの部屋に入り、「レーザー」を装備している状態に限り、無敵状態が解除されます。
逆に「レーザー」以外を装備していると無敵状態に戻ります。
恐らく、「レーザー」でしか破壊できないように工夫されているのだと思います。
ステージ開始時に無敵状態を解除しても結局意味がないので、日本語版では削除されたのでしょうね。
ちなみに、協力ミッションでは、片方が「レーザー」を装備していれば、もう片方は「レーザー」以外の武器で破壊することが可能です。
今回、日本語版のROMを読み込ませましたが、欧州版(PAL)のROMを読み込ませても同じように比較することができます。
PerfectEditor自体は、北米版(NTSC v1.1)の改造ができるようなツールとなっていますが、日本語版や欧州版(PAL)の読み込みまでは対応しているため、このような比較などは実施できます。(ただし、改造は非対応)